ITバブル期にネットサーファーの仕事をやってみた裏話

※当サイトはPRを含んでいます

ブラック企業の会社員を辞めて腑抜けになっていた頃、そろそろ何か仕事するかなーという時に「ネットサーファー」の求人を見つけました。趣味のインターネット徘徊がそのまま仕事になるチャンス!

一度でいいからやってみたかった仕事が、ちょうどいいタイミングで目の前に転がってきました。まさに渡りに船でした。

今回は、2000年代の都内IT系会社で働いた時の裏話です。内容はすべて実体験をもとにしていますが、特定を避けるため会社名は仮名の「ナミノリ・ドットコム」とし、一部の細部もぼかしています。

ネットサーファーに採用

当時の私は、ネットサーファーという仕事を一度やってみたくて仕方ありませんでした。インターネットを見放題で、それがお金になるなんて!

まあ好きなサイトを好きなだけ眺めていればいいわけではないんですけど、それでもネットを見て回ること自体が仕事になるとはオタク大歓喜です。

後から知りましたがかなりの応募倍率だったようです。そんな中、オタクパワーが効いたのか採用されて「うひょー!」となりました。

新しい検索サイトの中身を人力で作る

会社は都心の駅前のビルの一角にありました。当時流行りの鳴り物入りITベンチャーです。私たちは、人間がサイトをきちんと見て要約を書き、精度の高い検索サイトを作るというサービスの立ち上げ要員です。

ロボットが自動で集めるのではなく、人が見て内容をまとめているのがアピールポイントです。AI全盛の今から考えたら大変まどろっこしい人力作業です。

私が働き始めたのはサービスの公開より前です。ローンチまでの間にデータを作っておく期間があり、数か月働きました。

ネットサーファー係は自分の得意なカテゴリーを二つほど担当する仕組みでした。

私の担当は、レジャー施設とアルバイト関係。施設でバイトをした経験があり、大学の頃に求人サイトもさんざん見ていたからです。当時は人余りで、求人を見ている割になかなかバイトにありつけなかったんですけどね。

早番と遅番で一台のPCを共用

仕事は二部制で、一台のPCを二人で使っていました。私は早番で朝8時の出勤でした。

早起きは苦手なのによく1時間もかけて通っていたなあと思いますが、それでも続けられたのは、昼過ぎには解放されるからでした。

同じPCを午後に使うA君は、アダルトカテゴリーの担当でした。

午前はレジャー施設、午後はアダルト。同じPCなのに、ずいぶん振り幅の大きい仕事です。

A君は仕事のPCでエロサイトを見まくって冷静でいられるんだろうか…と興味がありましたが、私の退勤と同時にA君が仕事開始になる入れ替わりです。時間的にも雰囲気的にも無駄話できる感じではなく、A君も話しかけるなオーラが出てるタイプであいさつ以外話したことがないまま終わりました。

そもそも応募のときに得意分野をアピールしてしたはずですが「自分、エロなら任せてください!」とかアピールしたのでしょうか。興味深いです。

PCの利用者ごとにアカウント設定を分けていたので、私が使うときに履歴からいきなりアダルトサイトが出てきた、ということはありませんでした。

ネットサーファー

劇団員の仲間の舞台を鑑賞

ネットサーファー仲間は個性派ぞろいで、劇団員をしている人もいました。得意分野を担当する仕組みだったので、演劇関係のサイトを見る要員として採用されたのだと思います。

その人が出演するというので、舞台を観に行ったことがあります。別の人が、その舞台を大絶賛していたのです。

ところが、私と一緒に行ったもう一人の感想は「ええ…これを絶賛…?」

悪いけど全っ然面白くなかったのです。途中で帰りたくなりました。

終演後、同行者とカフェに行き「正直どうだった?」「ごめん、すげーつまらなかった…」「私も!」「大絶賛してた人と一緒に行かなくて良かったね…」と話したことまで覚えています。あの大絶賛は何だったのだろう、と2人で首をかしげました。

同じものを観ても感想が違うのは当たり前だけど、バイト先で劇団員の人と会ったときに感想を伝えるのにとても言葉を選びました…。

ギタリストと喫煙休憩問題

ギターを担いで出勤してくる人もいました。ミュージシャンだったのか何をしている人かは知りませんが、音楽サイト担当の人でした。

その人は、やたらとタバコ休憩に行って席からよく消えていました。幻のギターとタバコの人。

そこそこ人数がいたので、だんだん派閥のような空気も生まれてきました。タバコグループは喫煙所での話も盛り上がっていたようでますます消えるようになりました。

そのうち「喫煙者はしょっちゅうタバコ休憩に行って長らく帰ってこない人もいるのに、その間も給料が発生するのはずるい」と、タバコグループを糾弾する人が出てきて少し揉めました。

誰が言い始めたのかは知りません。でも私もタバコは吸わないので、内心「いいぞ、もっとやれー」と思っていました。結果、1勤務に10分まで、というような規定ができていました。

人が集まると何かしら問題が出るものです。そのあたりから、タバコ問題以外にも何となく不穏な空気も感じていました。

社員は鼻息荒く、公開前には泣く人も

会社の人たちは「これからうちのターン!やってやるぞ!」という勢いで、とにかく鼻息が荒かったのを覚えています。

有名企業からの引き抜き社員もいたためか、私の目には、社員がちょっとイキっていてネットサーファーを見下しているように映りました。仕事は面白いけれど、その態度はどうなの、という感じです。

かたや、ネットサーファーを統括する担当の社員が、いっぱいいっぱいになって泣きながら「何かが間に合わない!」みたいなことを全ネットサーファーに訴えられたこともありました。内容は忘れたけど正直ドン引きしたのだけ覚えています。

ローンチ直前はみんながピリピリしていて本当に大変そうでした。昼過ぎには帰れてフラフラしている私とは背負っているものが違ったのだと思います。

昼はランチとCDショップへ

そんな社員の大変さをよそに私はこの働き方がすっかり気に入っていました。

朝は早いけれど昼過ぎには終わる。近くでランチを食べて、大きなCDショップに寄って、平日の空いた街でショッピングもして、ゆっくり帰ってもまだ15時とかです。

何この余裕!!

それまでいたブラック会社員生活を辞めた後の私にとって、この時間の使い方は歓喜そのものでした。

やってみたかった仕事をしてフラフラして帰ってもまだ一日が残っている。早起きが苦手でも出勤できたのは、このお楽しみタイムがあったからです。

途中から在宅勤務に

この仕事は募集の時点から「最初の数か月は出勤して、その後は在宅」という触れ込みでした。

数か月ほど会社に通ったあと、在宅勤務に移りました。当時の私には斬新な働き方でした。

ところが、そのうち担当分野のサイトを一通り見尽くしてしまい、やることがなくなってきました。仕事はだんだん尻すぼみに。

ま、ちょっと飽きてきたしいい頃合いかな、と思って私のネットサーファー生活は終わりました。

そして終焉へ

その後、仕事を辞めてしばらくした時のこと。「ナミノリ・ドットコム、サービス終了」のネットニュースが目に入ってきました。あらあら。会社は長く続かず解散したようです。

ニュースを読むと資金が尽きて終わったという内容でした。引き抜きの社員もいたので、人件費も大きかったのだろうなと思います。あのイキってた人たち、あっさり倒産してどこに転職したのかなー。

やりたかったネットサーファーをやれて、ちょっと変わった人たちと働いて、観に行った舞台は微妙で、タバコ休憩問題を横目に見て、昼過ぎには一人で気ままにランチとショッピングへ。

仕事は楽しかったけれど、会社に特別な思い入れはありませんでした。

最後のほうの不穏な空気をうっすら覚えていたので、私の反応は「ああ、やっぱり潰れたかー」くらいで終わりました。